新年あけましておめでとうございます。

この『一献献上』のコラム記事を始めて2回目のお正月を迎え、また約1年半が経過しました。日本酒や季節の食べ物のお話を通して、多くの方に日本酒を楽しんでいただければとの思いからでした。今年から少し視点を変えて、その月々の季節と日本酒について、皆さんが普段の生活で見聞きしている言葉をご紹介していきたいと思っています。

正月と寒造り

『正月』は睦月、嘉月、初春とも呼ばれるおめでたい季節。新しい年、その年の新米で造った新酒と、若水(元旦に初めて汲む水)で清めた食物を供え、神様と共に新年を迎えます。人々は屠蘇酒を酌み交わし、御節料理とお雑煮を食べ、新しい始まりをお祝いするのです。

『寒造り』は、日本酒の仕込み方の1つの名称で、一般に気温の低い冬場に仕込む方法(11月〜2月頃)を意味します。寒さの最も厳しいとされるこの季節が、高品質の酒を仕込む最良の季節でもあります。厳しい冬の季節が酒造りに良いとされる理由は、寒い時期は気温が低いことで雑菌が繁殖しにくい事と、一定期間、低温状態を維持しやすいからです。温度管理は日本酒の味を大きく左右するわけで、寒造りが冬のこの時期、盛んに行なわれる理由なのです。

こうじ菌と酵母菌

この寒造りの主役は誰だかご存知ですか? 日本酒はご承知の通り、米と水で造られていますが、これらの原材料を日本酒に生まれ変わらせる本当の主役は、微生物である『こうじ菌』『酵母菌』です。蔵人たちは、あくまでその介添え役であり、このミクロの微生物が、厳冬の中、小さな命を育み、美しい酒造りを完結させるのです。まだ科学が発達しなかった昔、蔵人たちはこれを蔵に宿る神々のなせる業として、新酒を神前に捧げたのです。 新しい年が皆さんに取って素晴らしい年になりますように、では一献献上!

(一献献上はカナダ・バンクーバー情報誌Oops!うっぷすで連載中です。)

newYears2018