11月・燗酒

 朝晩すっかりと日が短くなり、一層肌寒い季節になってきましたね。新米を使った酒造りは、10月から11月のこの時期に仕込みが始まり、師走に掛けて新米で醸した新酒(搾りたて)が出回ります。

この新酒仕込みの時期に酒蔵さんを訪問機会がよくありますが、蒸し上がった新米の柔らかい香りと、「醪(もろみ)」の元となる「酒母(もと)」のさわやかな香りをこの時期になると思い出します。私にとって毎年心躍らせる季節でもあります。

日本酒紹介

 この季節新酒が飲めるだけでなく、美味しい冬の旬な食材を楽しめる季節でもあります。

海のものでは牡蠣、蟹、秋刀魚、鯖、山のものでは松茸、南瓜、大根、さつま芋など旬な食材が目白押しです。そして、こういった旬な食材と一緒に飲みたいお酒というと、やっぱり身体を芯から温めてくれる「燗酒」ですね。

今回ご紹介する日本酒はこの季節にお薦め、純米酒のみを醸す埼玉県の老舗「神亀酒造」の純米酒をご紹介します。

熟成純米酒・華吹雪

 神亀酒造(1848年創業)は、戦後初めて純米酒のみを造る蔵となった純米酒の先駆者です。

熟成させた酒をお燗で、食事と一緒に楽しむスタイルが得意で「燗酒と言えば神亀」と言われるほどです。熟成純米酒の特徴である熟成香や深い旨みは玄人向きですが、華やかな香りの日本酒に飽きてきた方、年代物の赤ワインなど重厚な味が好みの方にお薦めです。

この純米・華吹雪は、常温で2年以上熟成させた比較的ライトな味わいの熟成酒です。日本食はもちろん、トマトソースやポークソテーなどの食事と良く合います。お勧め温度は50〜55℃の熱燗ですが、お料理に合わせてお好みの温度を探してみてください。

 蒸し上がった酒米を担いで走る蔵人の肩から湯気が立ち昇ります。杜氏の叱咤一声が酒蔵に響き渡り、蔵人たちの意気も揚ります。霜月の早朝、未だ薄明かりの中、前日降った雪化粧に寒椿が鮮やかに映ります。杜氏と蔵人たちは、これから始まる酒造りに精魂を込めて醸すのです。季節の恵みに感謝しつつ、今年も始まった酒造りに、一献献上!

(一献献上はカナダ・バンクーバー情報誌Oops!うっぷすで連載中です。)