3月・弥生(やよい)
3月は旧暦で弥生、今の暦で言えば、啓蟄(けいちつ:3月6日)つまり大地が温まり冬眠していた動物たちが目を覚ます時です。そして三寒四温から日を追うごとに暖かさを増して春に近づいていく頃です。言葉の由来は弥(いや)の「いよいよ」と、草木が芽吹くという意味と「生い茂る」の生(おい)で「弥生(いやおい)」から『弥生(やよい)』と変化したと言われています。3月は新しい生命が動き出す時。ここバンクーバーでも桜の木が街頭のあちこちで美しい花がほころぶ時期です。
「桃の節句」と「桃花酒」
3月3日は『桃の節句』で、中国から伝わった五節句のうちのひとつです。女の子の健やかな成長を願い、3月最初の「巳の日」にひな人形を飾り、白酒・菱餅・あられ・桃の花などを供えて祀ります。かつて白酒ではなく、桃の花びらを漬けて作る『桃花酒(とうかしゅ)』が飲まれていたそうです。桃は邪気を祓うといわれ、百歳まで生きるという不老長寿を意味します。親は子の成長を願い、酒に桃の花びらを浮かべ、子供の幸福を願うのです。
「酒母(もと)」と「醪(もろみ)」
今回は前回の麹菌と酵母菌に深い関係のある「酒母(もと)」と「醪(もろみ)」について説明していきましょう。 酒母・酛、どちらも『もと』と読みます。酒の元であり、酒の母ということになりますね。酛とは、蒸米に麹と仕込み水を加えた状態で酒母を更に加えて培養したものを酒の母(酒母)と書いて、『もと』と呼びます。また「醪」は、出来上がった酒母をベースに麹、蒸米、仕込み水を更に加え、大型タンクに仕込んだものを言います。これは一度に全量を仕込むのではなく、3回に分けて仕込む方法が一般的で、三段階に分けて倍増し、その方法を三段仕込みと言います。
美味しい新酒が出回る季節の始まりです。素晴らしい日本酒に一献献上!
(一献献上はカナダ・バンクーバー情報誌Oops!うっぷすで連載中です。)