酒造りの冬
二十四節気で言えば、第十九・立冬(11月7日)の頃でしょうか。立冬とは、立春、立夏、立秋などと並んで四季の節目、言わば冬の始まりです。また立冬は秋分と冬至の中間で、この日から立春の前日までが暦上の冬となります。11月は霜月と呼ばれますが、この時期冬の始まりを言う時、霜見月とか雪待月とも呼ばれ、冬の風物詩が文字に表れているように冬を強く感じる頃でもあります
お酒の『温度』を考える
以前Vol.13でお酒の『温度』についてお話をしましたが、今回は寒い”冬”を前に少し視点を変えて日本酒の『温度』についてお話をしていきます。
日本酒の醸造方法はアルコール度数20%まで高めることができる優れた醸造技術だと言われていますが、その原酒を濾過・加水することで味を整えアルコール度数15〜16%に調整します。世界中のアルコール飲料の中で、お湯で割り、温めて飲むタイプは多くありますが、アルコールそのものを冷やしたり温めるタイプのアルコール飲料は非常に珍しく、日本酒はユニークなアルコール飲料と言えるのです。
皆さんはどんなお酒をどのくらいの温度で楽しまれていますか? 発砲系日本酒以外のほとんどすべての日本酒は、温めて美味しくいただけます。吟醸酒は冷酒だけでなく常温から人肌(15〜35℃)に温めると、手酌で呑む度に芳香が立つばかりか、優しく旨味が広がります。純米酒や本醸造では、ぬる燗から熱燗(40〜50℃)でいただくと、味の濃いお料理にも負けない食中酒として幅広く楽しめます。
初雪の便りが届くこの季節、『燗酒』は身体と心を芯から包み込むように温めてくれます。厳しい寒さに向かう蔵人の日本酒に対する真摯な思いと、酒造りへの情熱を感じつつ、時間をかけて味わい楽しみたいものです。 「燗酒」が温かく 心に沁みる季節です。では一献献上!
(一献献上はカナダ・バンクーバー情報誌Oops!うっぷすで連載中です。)