10月・神無月(かんなづき)

10月は旧暦で「神無月(かんなづき)」と呼ばれ、その由来は八百万(やおよろず)の神様達が出雲大社に集まり、国許(くにもと)から神様がいなくなることから、神がいない月として神無月と呼ばれるようになったそうです。

また、新米でお酒を醸造し始める月であることから「醸成月(かみなんづき)」とも呼ばれるようです。バンクーバーでも木々が色づき、秋の深まりを感じられるようになりました。

秋の味覚と日本酒

実りの秋、収穫の秋。日本酒ファンにとっては、日本酒を美味しくいただく絶好の季節到来です。

皆さんは日本酒と楽しめる食材と言えば、何が思い浮かびますか?
秋の魚介類で言えば、秋刀魚、戻り鰹、牡蠣などが思い浮かびます。その中でも戻り鰹は春のさっぱりした初鰹に対して、秋に太平洋岸を南下した鰹が、餌をたっぷりと食べ、脂がのり「トロ鰹」などとも呼ばれ、濃厚な味わいが楽しめる海の幸です。

牡蠣は今では一年中楽しめる海の食材になりましたが、秋からが旬です。英語で最後に “-ER” がつく月は牡蠣が美味しいと言われます。「海のミルク」とも呼ばれ、ミネラルが豊富に含まれ旬な食材としてだけでなく、栄養バランスの優れた食材と言えます。

秋の野菜では、松茸、しいたけ、茄子、栗、人参、大根や水菜など、たくさんの思い浮びます。秋茄子は嫁に食わすなというぐらい美味しいと言われ、「秋」には日本酒と合わせて食べる美味しい食材には事欠きません。

秋に楽しむ日本酒

秋の季節に楽しめる日本酒といえば、「ひやおろし」「秋上がり」が思い浮かびます。

一般的に「ひやおろし」と「秋上がり」を同じものを指すと思われがちですが、厳密に言うと、冬に仕込んだ日本酒を春に一度火入れをして、ひと夏、貯蔵させ、秋口に「冷や(再び火入れをせず)」のまま卸す、つまり出荷することを「ひやおろし」と言います。

それに対して「秋上がり」は、ひと夏を越えて、秋に円熟した旨味がのって、酒質が向上した、 ”味が上がった” お酒を意味する言葉として「秋上がり」と言うようになりました。ひと夏、貯蔵することで角が取れ、まろやかな味わい深いお酒に仕上がり、常温や少し温めてゆっくりと飲むのが美味しい飲み方です。

料理と日本酒

美食家でも知られる京都の芸術家、魯山人(ろさんじん)は「料理とは、どこまでも理を料ること。不自然な無理をしてはいけない」また、「料理は悟ること。拵(こしら)えることではない」と言っています。

その季節の旬な食材を活かした、飾らない料理で心からもてなすことこそが、和食の真髄と言えます。そして、その季節の料理を引き立てるのが、日本酒の役割と言えます。

秋深まる季節、稲刈りを終えた農夫達は、収穫の祝いもそこそこに旅立ち、厳しい冬を酒蔵にて酒造りに専念します。精魂込めて醸したお酒は、春に産声を上げ、新酒で祝う。そして蔵人は桜前線の北上と共に、郷里の農家へと家路につくのです。お料理も酒造りも共に、季節に根差した美しい日本の文化と言えるのではないでしょうか。

では実りの秋に一献献上!

(一献献上はカナダ・バンクーバー情報誌Oops!うっぷすで連載中です。)

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