新元号『令和』の始まり
4月30日今上天皇の退位に伴い、5月1日に「皇位の継承」が行われ、30年続いた「平成」の時代に終わりを告げました。そして新元号「令和」に時代が改められたのです。
この新元号「令和」の出展は中国の漢籍から求めず、今回初めて日本最古の歌集である『万葉集』から引用されたそうです。安部首相は、この新元号「令和」に込めた意味について「悠久の歴史と香り高き文化、四季折々の美しい自然、こうした日本の国柄をしっかりと次の時代へと引き継いでいく、厳しい寒さの後に春の訪れを告げ、見事に咲き誇る梅の花のように、一人一人の日本人が明日への希望とともに、それぞれの花を大きく咲かせることができる、そうした日本でありたいとの願いを込めた」と記者会見で述べていました。
大変素晴らしい意味がこの「令和」に込められているのだと感じました。皆さんはどう思われましたか?
初春の令月にして…
新元号の出展となったのは、万葉集「梅花の歌三十二首序文」序文の一節で、
「時に、初春(しょしゅん)の令月(れいげつ)にして、気淑(きよ)く風和らぎ、梅は鏡前(きょうぜん)の粉(こ)を披(ひら)き、蘭(らん)は珮後(はいご)の香(こう)を薫(かお)らす」
から引用されました。これは「初春のおめでたい良い月に、さわやかな風が柔らかく吹いている。その中で、梅の花が美しい女性がおしろいをつけているように白く咲いて、高貴な人が身につける香り袋のように薫っている。」と詠っているのです。
万葉集は、作者が皇室や位の高い人達だけでなく、さまざまな身分の人達の詩が多く編纂されている和歌集だそうです。日本の四季の中で、民衆の普段の生活や人々の考えが深く反映されている国書だと言えます。「令和」がそういった日本の古典から引用されたのは大変興味深いのではないでしょうか。
「神饌(しんせん)」と「御神酒(ごしんしゅ)*」
*神様に奉納してから我々がいただく際には読み方が変わり、お神酒(おみき)と呼びます。
三重県伊勢市にある伊勢神宮は、全国に数ある神社の中で皇室と特に深い関係があり、皇室の祖神である「天照大御神」が祀られています。この伊勢神宮の境内に「御酒殿(みさかどの)」という神宮の神事で使われるお酒がおさめられているお社がひっそりと建っています。そこには「神饌(しんせん)」という神棚への供え物があり、御神酒(ごしんしゅ)に添えて新鮮で清浄な海川山野の産物の他,塩と水が毎日朝夕2回神殿へ供えられます。そのすべての供物は自給自足され、御神酒を醸すお米も伊勢神宮の神田で作られているそうです。
日本古来のお酒には、果物のお酒があったことは歴史資料にも残っているそうですが、瑞穂の邦、日本のお酒はやはり、お米のお酒が原点だと言えるのです。
麹(こうじ)について
今回はお酒造りで大変重要だと云われている麹(こうじ)についてお話しをしたいと思います。
麹は米・麦・大豆などの穀物に、麹菌(正式名称:二ホンコウジカビ)というカビの一種が生えたモノを指します。英名で「Aspergillus Oryzae(アスペルギルス・オリゼ)」と呼ばれ、この麹菌と呼ばれる菌を使って発酵させることを麹造りといいます。
現在、穀類を糖化する方法としては、東洋では麹で、西洋では麦芽(ばぐが)が用いられています。穀物に含まれるデンプンそのままでは発酵しません。先ずブドウ糖にまで分解しないとアルコール + 炭酸ガスを発生させて、
日本酒は醸されないのです。この麹造りは酒造りで「一麹、二醸(もと)、三造り」と言われるぐらい、非常に大切な工程とされています。いわば、酒造りの要の工程なのです。
蔵人たちは麹室(こうじむろ)の中で、元気の良い麹菌の繁殖した麹を造らなければ良い日本酒は醸せないのです。
新しい時代「令和」が始まりました。
我々日本人が古来大切にしてきた美しい四季の自然と、大切にしてきた我々日本人の中にある「和」のこころです。「和を以て尊しと為す」ですね。それでは、新しい時代「令和」に一献献上!
(一献献上はカナダ・バンクーバー情報誌Oops!うっぷすで連載中です。)