4月・稲を植える月
4月・卯月(うずき)、暦上では初夏になり、二十四節気では春分を過ぎると「清明・せいめい(4月4日)」と言って草花が活気づく季節の始まりです。また卯月は、稲を植える月として「植月(うえづき)」「苗植月(なえうえづき)」とも言われ、私たち日本人にとって主食である『お米』の苗を植える月です。
田植えを終えた水田に初夏の青空が鮮やかに映り、青葉はその色をさらに濃くし、虫たちは一斉に動き出す季節です。
瑞穂の国
お米については「一献献上」で何度か話をしてきましたが、今回は私たち日本人の主食でもあるお米について書いていきたいと思います。日本は古来『瑞穂の国』と呼ばれてきました。瑞穂とはみずみずしい稲穂のことで、稲が多く取れることから瑞穂の実る国として日本国の美称として呼ばれてきました。
稲作は、弥生時代に中国からもたらされたと言われています。当時の稲作は現在のような水田稲作ではなく、集落周辺にある谷間や里山などの斜地を利用した棚田で栽培されてきたそうです。以来稲作の発展は、歴史の権力者たちと大きく関わりを持ってきました。
日本では、古来お米は神からの「授かりもの」と考えられてきました。天皇の即位祭儀は、一年で最初に得られた初穂を献上する祭儀として執り行われ、江戸時代まで領地の首長に対して、年貢としてお米で納められていたのです。
お米 vs. 和食の相性
皆さんは普段意識をしないで『和食』を食べておられると思いますが、和食 vs.洋食の食べ方の違いについて考えた事がありますか?
フレンチに代表される洋食は、前菜からメインまで一皿一皿食していくのと比べて、和食の基本形とされているのが「一汁三菜」、ごはん、汁物、主菜、副菜2品。ご飯と汁物、おかずを交互に食してきました。
これは日本人の特徴的な食べ方「口中調味」と言い、味つけのない白いご飯を口の中で咀嚼しながら、おかずで味つけをする事をこう呼ぶのだそうです。「おかず」が直接舌に触れ、ご飯の甘みと食感が混ざり合うことで、より少ない「おかず」でも美味しさを感じ満足することができるというのです。
しかし食文化の変化から、お米よりパンや麺類などを食する機会が増え、日本人の米摂取量は1962年(昭和37年)をピークに一貫して減少傾向にあるそうです(農水省調べ)。
お米は神様からの「授かりもの」として大切に扱われてきました。農夫たちは五穀豊穣を祈り「御神酒」と共に神棚に感謝を込めて捧げてきたのです。
現代では食文化や生活様式の変化から、お米への想いも少しずつ稀薄になってきたのかもしれません。文化というものは本来人々の生活の中で変化していくものだと思います。古来から大切にされてきたお米への想いが少しずつ変化していくことに少し寂しさを憶えるのは私だけでないと思います。
厳しい冬の酒造りをようやく終えた蔵人たちは、感謝を込めて神棚に向かって静かに手を合わせます。新酒を神に捧げ、杯を交わす人々の笑顔が心に染み入ります。では自然の恵みに感謝して、一献献上!
(一献献上はカナダ・バンクーバー情報誌Oops!うっぷすで連載中です。)