Sake maple

四季のお酒 『秋編』

二十四節気の第十六、ちょうど昼と夜の時間がほぼ等しくなる時が秋分の日(2016年9月22日)です。立秋からこの秋分の日を挟み、冬至の前日までが暦でいう『秋』ということです。以前「四季を愛でる」についてお話しましたが、日本には美しい四季があり、それをことばで祝福する、つまりそれぞれの「季節を寿ぐ(言祝ぐ)」という習慣があります。『秋』は実りの秋と言われ、収穫を祝う伝統文化がありますね。皆さんは四季、それぞれの季節に美味しいお酒があるのをご存知ですか? 四季を通じて皆さんに、美味しい日本酒をご紹介していきたいと思います。

冷(ひや)おろし

秋には『冷(ひや)おろし』というお酒がありますが、これは冬に仕込んだ新酒が劣化しないよう春先に一度だけ火入れ(加熱殺菌)し、貯蔵したお酒のことを言います。ひと夏を超して、外気と貯蔵庫の中の温度が同じになる秋口に、本来出荷前の2度目の火入れ(加熱殺菌)をせず、「冷や」のままでタンクから樽に「卸(おろ)して」出荷したことから、こう呼ばれるようになりました。暑い夏の間ひんやりとした酒蔵の中で静かに眠らせ、少しずつ熟成を深めていきます。そして秋の訪れとともに目覚めるお酒、それが「冷(ひや)おろし」です。豊穣の秋にふさわしい、深みと穏やかな香りとまろやかな口当たりが魅力のお酒です。季節の旬な魚や野菜と飲めば一層味わいが引き立ちます。四季それぞれの食べ物と日本酒で季節を寿ぐ。さあ秋本番です。

では一献献上!

(一献献上はカナダ・バンクーバー情報誌Oops!うっぷすで連載中です。)