2月・如月(きさらぎ)

“東風吹かば、匂い起こせよ梅の花、主なしとて春な忘れそ”

菅原道真が無実の罪で都を追われた時、自邸の梅の木に「春風が吹いたら、梅の花を咲かせて大宰府まで香りを届けておくれ。私がいなくなっても春を忘れるなよ」と詠んだ和歌です。

京都・北野の実家から程近いところに子供の頃から”天神さん”の名前で親しまれている神社があります。学問の神様 菅原道真公が祀られている北野天満宮です。1年で最も寒いとされる大寒(1月20日)を過ぎると梅の蕾が次第に綻び、2月に入ると天満宮の境内は紅梅、白梅などで一気に春の香りが漂います。

2月・如月は冬が極まり、春の気配が立ち始める立春(2月4日)の月、梅見月(うめみつき)とも呼ばれ、季節の始まり、梅の花が美しく香りたつ季節でもあります。

梅の花は、他の花に先駆けて咲くので「花の兄」とも呼ばれるおめでだい花なのです。

梅の想い

道真公が祀られている北野天満宮の境内に梅の花が満開になる頃、梅を愛した道真公の命日(2月25日)に「北野梅花祭」が催されます。この頃、本殿の前に枝ぶりの良い美しいご神木「紅和魂梅(べにわこんばい)」が見頃を迎えます。道真が左遷された地とされる福岡県大宰府の太宰府天満宮の境内に、これと同じ種の梅の木があり、境内でいち早く咲く梅の木として知られています。

これは道真公が都を去った後、主を慕って一夜にして大宰府まで飛翔し、道真公のいる大宰府で綺麗に梅の花を咲かせたと伝えられているご神木「飛梅(とびうめ)」です。何ともロマンチックな話ですね。

梅酒とは?

梅酒は、2015年に業界自主基準で「本格梅酒」と「梅酒」の2つに分けて表示するよう制定しました。前者「本格梅酒」は梅・糖類・酒類のみを原料とした無添加の梅酒を意味し、酸味料などの添加物を加えた梅酒をそのまま「梅酒」と呼ぶようにしたのです。

Nanko Ume CHOYA UMESHU

梅酒とプラムワイン

そもそも「梅酒」ってどうやって造ってるか皆さんはご存じですか?

またカナダでは「プラムワイン」って英語でいうようですが、「梅酒」と「プラムワイン」って同じなんでしょうか?

「梅酒」として一般的に飲まれているものは、蒸留酒(ホワイトリカー、焼酎、ブランデー)に梅と砂糖を漬け込んで梅のエキスを抽出した混成アルコール飲料のことを言います。それに対してプラムワインは、梅の果汁を酵母により発酵させたワイン(甘味果実酒)を一般的に指します。

最近では日本酒ベースの梅酒も造られており、従来の蒸留酒(ホワイトリカー、焼酎、ブランデー)に梅と砂糖を漬け込んで梅のエキスを抽出した梅酒に比べ、日本酒本来のまろやかな甘さと低アルコールの梅酒は若い層に人気です。

いろいろな美味しい梅酒がありますが、梅酒の製造方法はラベルに表示する義務がないこともあり、しっかりと確認して「梅酒」を楽しみたいものです。

梅酒の楽しみ方

梅酒はその種類によって様々な飲み方があります。

幾つかご紹介していきましょう。先ず基本は食事前にアペリティフ(食前酒)として、シューター(グラス)でストレートで頂きます。食事前に飲むことで身体も温まり消化促進につながります。個人的には大きめの氷でオンザロックで少し時間をかけていただきます。梅酒が身体を温めて会話も弾みます。

冬ならお湯割り(梅酒1:お湯1)で、夏はソーダ割り(梅酒1:ソーダ―2)でのど越し爽やかに楽しみます。またカクテルとして色々な楽しみ方がありますが、私のお気に入りは梅酒Gin(梅酒7:ジン3)です。

梅酒にはクエン酸、コハク酸が多く含まれ疲れ物質と言われる乳酸を分解します。また梅はアルカリ性食品で血液をサラサラにする効果があると言われています。飲み過ぎは身体によくありませんが、昔から薬用酒としても利用されてきました。健康で楽しく飲みたいものですね。

私達が子供の頃は、台所の片隅に古めかしい瓶に青梅を漬けた梅酒がありました。身体の芯まで温めてくれる梅酒は、祖母から母へと受け継がれ、家族の健康を守ってきたのです。母の家族への愛情と美しい梅の花に、一献献上!

(一献献上はカナダ・バンクーバー情報誌Oops!うっぷすで連載中です。)