4月・春はあけぼの

春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山際、少し明りて…。

「枕草子」第一段、冒頭の有名な一節です。それは「春の季節は、ほのぼのと夜が明け始めようとする頃が、何とも趣があって良い…」という描き出しで始まります。

我々日本人は、四季折々の中にある自然の美しさ、特に「春」という季節に惹かれて、様々な詩が詠まれ続けてきました。

4月、別名「卯月(うづき)」。十二支のひとつ「卯年・うさぎ」4番目に数えられる干支であることから卯月という説があるそうですが、一節には稲の植える月で「植月(うづき)」から転じたとも伝えられています。

春の季節には人々の生活の中で ”卒業” や ”旅立ち” の時と重なり、私たちの心を動かされる特別な季節なのかもしれません。

季節を愛でる

「季節を愛でる」という言葉があります。これは美しい季節をいつくしみ、味わい感動するという意味です。また春の季節には「桜」が美しく咲き誇ります。「桜」は日本を象徴する花として広く愛されているだけでなく、桜の花の散り際の潔さに、私たちは心を動かされるのではないでしょうか。

また古来、農夫たちは「田の神様」が宿る木として、桜の木を大切にしてきました。農夫たちはこれから始まる「田植え」に備え、桜の木に手を合わせ、その年の豊作と家族の幸せを祈り献酒するのです。日本酒の文化も、古来、四季折々の美しい風物詩や、こういった人々の日々の生活に深く根差したものから生まれてきたのだと言えます。

「純米酒」とは

春の季節にもぴったりの「純米酒」についてお話をしたいと思います。

「純米酒」は、米麹、そしてだけで醸造された日本酒で、醸造用アルコールなど一切添加物は使用されていません。

「純米酒」はこのように添加物を使用していないことから、無垢な、本物の日本酒として広く日本人に好まれてきました。一般的に米の旨みや深いコクのあるタイプが多く、食中酒として代表的な日本酒のタイプと言えます。

純米酒は「純米酒」「特別純米酒」「純米吟醸酒」「純米大吟醸酒」に分けられ、その精米歩合、醸造方法、原材料、香味の違いなどでよって4種類に分類されます。

現在では「純米酒」と呼ぶには、その精米歩合の規定(以前は70%以下)がなくなりましたが、「純米吟醸酒」と呼ぶためには精米歩合60%以下、「純米大吟醸酒」では精米歩合50%以下という条件が加わります。

また「特別純米」は特別な製法や原材料で醸造されている「純米酒」になります。蔵独自の特徴を活かした特別な純米酒というわけです。

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純米酒を楽しむ

純米酒はお米だけで醸したお酒ですから、お米との相性が良く、白米と一緒に頂く和食との相性が抜群です。

また様々な温度で楽しめるのが純米酒の大きな特徴ですが、冷酒なら季節の野菜や魚料理のような比較的味の軽いお料理にも相性が良く、室温からぬる燗で温めて飲めば、お米の旨みも感じやすくなり、肉料理や中華料理など、油分の多いお料理にも相性抜群です。またお酒を温めることでアルコールの体内への吸収が穏やかになり、身体への負担も軽減されます。

春分の日を過ぎれば日も長くなり、日が傾く午後から夕暮れになっても暖かい春の陽気が感じられる頃です。それでも夕暮れになれば肌寒くなってきます。そんな時、日本酒を少し温めて、春の季節の美しさと陽気をゆっくりと楽しんでみては如何でしょうか。

季節の野菜と魚と一緒に、ひと肌の日本酒を口にすれば、お酒の温かさとほのかなお米の香りがゆっくりと広がります。日中の慌ただしい時間がゆっくりと流れていきます。

この季節は春の美しい花と陽気に誘われ、動物たちも一斉動き出します。桜が見ごろを迎える頃、蔵人達も家族に思いをはせて郷里への家路を急ぐのです。
美しい春と桜に一献献上!

(一献献上はカナダ・バンクーバー情報誌Oops!うっぷすで連載中です。)