9月・長月(ながつき)

 8月・仲秋のお盆も過ぎ、9月に入ると暦の上では晩秋です。日本では厳しい残暑が続いていると思いますが、バンクーバーではすっかり日も短くなり朝晩肌寒い日が多くなってきました。季節の変わり目ですので、体調管理に十分に気を付けましょう。

 9月は、二十四節気で言う白露(はくろ)や秋分の日(9月23日)があり、昼と夜の長さがほぼ等しくなる頃で、日増しに秋も深まり朝晩冷え込む時期になりました。また9月は稲穂がいよいよ稔り、稲刈りも間近です。

お米のお話

 数回にわたりお話ししてきたお米の話も、今回が最終回です。

日本全国の酒蔵では、コストダウンのためばかりでなく基本的に「地産地消」の観点から地元の酒米を使用する傾向があります。また美味しい日本酒を醸す上でも、醸造に使用する水と米の相性が非常に重要で、地元の酒米を使用することが多いようです。

酒米の王様・山田錦

 酒米と言えば、まず山田錦の話をしないといけません。

兵庫県原産で、作付面積第1位を誇る酒造好適米の代表的な銘柄・山田錦(やまだにしき)「酒米の王様」とも呼ばれており、広く全国の酒蔵で使用されています。

山田錦は、心白が大きく高精米にも耐えられ、吸水性が高く、雑味のもととなるタンパク質の量が少ないと言われています。軽快できれいな酒質になり、大吟醸酒など香りの高い日本酒に向いていると言われています。ご存じの方も多いと思いますが、山口県の旭酒造「獺祭」はこの山田錦を使用しています。

酒米の東の横綱・五百万石

 新潟県原産の「五百万石(ごひゃくまんごく)」は、山田錦に続き、作付面積第2位を誇る酒造好適米です。

主に新潟県、富山県、石川県、福井県などの北陸地方を中心に栽培され、地元の酒蔵を中心に使用される酒米です。加工性にも優れ、麹を造りやすいと言われており、淡麗でスッキリした酒質に仕上がります。この五百万石は、福井県の銘酒・黒龍酒造が多く使用しています。

寒冷地にも強い酒米・美山錦

 長野県を代表する酒米「美山錦(みやまにしき)」は、日本で作付面積3位を誇る代表的な酒米です。「山田錦」、「五百万石」と合わせて三大酒造好適米と言われています。

寒冷地での栽培にも強く、稲が早く成長すると言われ、酒質は硬く、淡麗でスッキリとした味わいがあると言われています。「美山錦」を使用している長野県の宮坂酒造「真澄」が有名でしょう。

酒米の父・雄町

 酒造好適米としては最古の品種と言われる、岡山県原産の酒米雄町(おまち)

酒米の父と呼ばれる雄町は、山田錦や五百万石の先祖に当たる酒米です。栽培の難しさから、山田錦や五百万石などに取って代わられ、作付面積が激減し一度は絶滅の危機にさらされましたが、岡山県を中心とした酒蔵が栽培を再開し、近年では多くの酒蔵が使用している人気の酒米の一種です。

雄町は、芳醇でコクのある酒質になるため、生酛造りをしている酒蔵で多く使用される傾向があるようです。

Sake Rice

 9月、黄金色に輝く田園に頭を深く垂れた稲穂が稔りの季節を迎えます。 真っ青な秋晴れに気持ちよく赤蜻蛉が飛んでいます。農夫は稲刈りを間近に控え、厳しい農作業にも自然と笑みがこぼれます。

では稔りの季節に一献献上

(一献献上はカナダ・バンクーバー情報誌Oops!うっぷすで連載中です。)