8月・葉月(はづき)
8月・葉月(はづき)の呼び名は所説あるようですが、『穂張り月』『秋風月』など、実りの秋を前に田園の風景や秋の始まりを意味する月のようですね。鬱陶しい梅雨も明け、季節の節目と言える土用の丑の日(7月28日)が過ぎ、秋の気配立つ『立秋(8月8日)』を迎える頃になりました。
暑中お見舞い申し上げます
この「立秋」を過ぎれば暦上では残暑、二十四節気の小暑と大暑の間を「暑中」と言い、一年で最も厳しい季節と言われています。この時期に相手の体調を気づかい、季節の便りとして自らの近況を伝える「暑中見舞」という習慣が日本にはあります。
過ごし難いこの時期にちょっとした心添えで便りを送る。日本語には『慮る(おもんばかる)』という言葉もあります。「慮る」とは、元々「おもい・はかる」という意味で、あれこれと相手のことを思い巡らし、想う優しい気遣い「心根(こころね)」のことです。「暑中見舞い」はそんな優しい心根で綴る便りなのです。
お米のお話
我々日本人は近年、食生活の変化でパンや麺類などを食することが増えてきましたが、日本人の主食は、やはり「お米」と言って差し支えないと思います。
そして、その国で最も多く流通している穀物を原材料とし、その国の文化や風土、そして歴史の中で発達してきたアルコール飲料が夫々の国にあります。日本の場合、それが『日本酒』と言えます。
前回から日本酒にまつわるお米の話をしていますが、今回も我々日本人の主食である「お米」について、日本酒の視点で話しを続けてみたいと思います。
麹米(こうじまい)とは
日本酒の原材料である「酒米(さかまい)」について以前お話しをしましたが、日本酒の醸造工程で、麹米(こうじまい)、酒母米(もとまい)、そして掛米(かけまい)の3つのお米についてご説明をしておかないといけません。
先ず「麹米(こうじまい)」とは、日本酒を醸造する最初の工程で、米麹(こめこうじ)の元となる原料・白米のことを指します。蒸した麹米を麹室と呼ばれる部屋の中で麹菌を振り掛け、麹菌を繁殖させて米麹を造っていきます。酒造りに使用する米全体の約20%を麹米として使用します。
酒母米(もとまい)とは
米と水、麹、酵母、乳酸を混ぜて培養したものを酒母(もと)と呼びますが、この酒母を造る時に使用される米が「酒母米(もとまい)」です。酒母は発酵が進んでいくと、醪(もろみ)になります。酒母造りに使われる米は、全体の約10%です。
掛米(かけまい)とは
醪を仕込む際に加えるお米を「掛米(かけまい)」と呼びます。掛米は発酵中の醪(もろみ)の中に投入されますが、掛米には大量の米が必要で、日本酒造りで使われる米の約70%が掛米として使用されます。
酒米に含まれる「心白」には多くのでんぷん質が含まれますが、そのでんぷん質が糖に変化し、アルコールと炭酸ガスが生み出され、日本酒が醸されるのです。
つまり、日本酒醸造工程が進んで行く中で、「お米」が日本酒全体の酒質に大きく影響していくことになるわけです。
(一献献上はカナダ・バンクーバー情報誌Oops!うっぷすで連載中です。)